7.15.6. geo_distance
#
7.15.6.1. 概要#
geo_distance
は二点間の距離を計算します。
7.15.6.2. 構文#
geo_distance
は二つの点を指定します。引数 approximate_type
は省略可能です。
geo_distance(point1, point2)
geo_distance(point1, point2, approximate_type)
approximate_type
のデフォルト値は "rectangle"
です。 approximate_type
を省略した場合、 geo_distance
は二点間の距離を "rectangle"
が指定されたものとして計算します。
7.15.6.3. 使い方#
geo_distance
はGroongaの組み込み関数の一つです。
組み込み関数を grn_expr にて使うことができます。
geo_distance
関数は point1
と point2
の座標値から二点間の距離(近似値)を計算します。
注釈
Groongaは三つの組み込み関数を距離の計算のために提供しています。 geo_distance()
、 geo_distance2()
、 geo_distance3()
です。これらの違いは距離の計算アルゴリズムにあります。 geo_distance2()
と geo_distance3()
はバージョン1.2.9より非推奨となりました。 geo_distance2(point1, point2)
の代りに geo_distance(point1, point2, "sphere")
を使用してください。 geo_distance3(point1, point2)
の代りに geo_distance(point1, point2, "ellipsoid")
を使用してください。
例とともに geo_distance
について学びましょう。このセクションでは簡単な例を示します。
使い方による違いがわかるようにスキーマ定義とサンプルデータを用意しました。これらのサンプルはニューヨークとロンドンを例に距離の計算方法を示します。
距離の計算にlocationカラムの値を使う (
Cities
テーブル)距離の計算に明示的に指定した座標値を使う (
Geo
テーブル)
7.15.6.3.1. locationカラムの値を使う#
使用例を示すための Cities
テーブルのスキーマ定義とサンプルデータは以下の通りです。
table_create Cities TABLE_HASH_KEY ShortText
column_create Cities location COLUMN_SCALAR WGS84GeoPoint
load --table Cities
[
["_key", "location"],
["New York City", "146566000x-266422000"]
]
実行例:
table_create Cities TABLE_HASH_KEY ShortText
# [[0,1337566253.89858,0.000355720520019531],true]
column_create Cities location COLUMN_SCALAR WGS84GeoPoint
# [[0,1337566253.89858,0.000355720520019531],true]
load --table Cities
[
["_key", "location"],
["New York City", "146566000x-266422000"]
]
# [[0,1337566253.89858,0.000355720520019531],1]
この実行例では location
というカラムを持つ Cities
テーブルを作成します。 location
カラムには座標値を保存します。東京の座標値がサンプルデータとして保存されています。
実行例:
select Cities --output_columns _score --filter 1 --scorer '_score = geo_distance(location, "185428000x-461000", "rectangle")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "_score",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 5807750
# ]
# ]
# ]
# ]
このサンプルは geo_distance
が location
カラムと座標値から距離を計算していることを示します。
geo_distance
の第二引数として渡された値 ("185428000x-461000")はロンドンの座標値です。
7.15.6.3.2. 明示的に指定した位置を使う#
使用例を示すための Geo
テーブルのスキーマ定義とサンプルデータは以下の通りです。
table_create Geo TABLE_HASH_KEY ShortText
column_create Geo distance COLUMN_SCALAR Int32
load --table Geo
[
{
"_key": "the record for geo_distance() result"
}
]
実行例:
table_create Geo TABLE_HASH_KEY ShortText
# [[0,1337566253.89858,0.000355720520019531],true]
column_create Geo distance COLUMN_SCALAR Int32
# [[0,1337566253.89858,0.000355720520019531],true]
load --table Geo
[
{
"_key": "the record for geo_distance() result"
}
]
# [[0,1337566253.89858,0.000355720520019531],1]
この実行例では distance
カラムを持つ Geo
テーブルを作成します。 distance
カラムには距離を保存します。
実行例:
select Geo --output_columns distance --scorer 'distance = geo_distance("146566000x-266422000", "185428000x-461000", "rectangle")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "distance",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 5807750
# ]
# ]
# ]
# ]
このサンプルは geo_distance
がロンドンの座標とニューヨークの座標から距離を計算していることを示します。
7.15.6.4. 引数#
7.15.6.4.1. 必須引数#
必須引数は二つあります。 point1
と point2
です。
7.15.6.4.1.1. point1
#
計算しようとしている二点間の開始地点を指定します。
GeoPoint型の値を指定することができます。 [1]
GeoPointについては データ型 を参照してください。
7.15.6.4.1.2. point2
#
計算しようとしている二点間の終了地点を指定します。
GeoPoint型の値か座標を表す文字列を指定することができます。
GeoPointと座標については データ型 を参照してください。
7.15.6.4.2. 省略可能引数#
省略可能な引数として approximate_type
があります。
7.15.6.4.2.1. approximate_type
#
距離を計算するときに地形をどのように近似するかを指定します。
approximate_type
の値は以下を指定することができます。
rectangle
sphere
ellipsoid
注釈
geo_distance
には制限があります。 sphere
や ellipsoid
を近似方法として選択した場合、子午線や日付変更線、赤道といった境界をまたぐ距離の計算を行うことができません。この制限は rectangle
を近似方法として選択した場合にはありません。これはGroongaの実装上の一時的な制限ですが、将来的には修正される予定です。
7.15.6.4.2.1.1. rectangle
#
この引数を指定すると地形を方形近似して距離を計算します。
簡易な式で距離の計算を行うので、高速に距離を求めることができますが、極付近では誤差が増大します。
rect
を省略表記として指定することができます。
カラムの値で距離を計算するサンプルは以下の通りです。
実行例:
select Cities --output_columns _score --filter 1 --scorer '_score = geo_distance(location, "185428000x-461000", "rectangle")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "_score",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 5807750
# ]
# ]
# ]
# ]
明示的に位置を指定して距離を計算するサンプルは以下の通りです。
実行例:
select Geo --output_columns distance --scorer 'distance = geo_distance("146566000x-266422000", "185428000x-461000", "rectangle")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "distance",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 5807750
# ]
# ]
# ]
# ]
明示的に子午線や赤道、日付変更線をまたぐような位置を指定して距離を計算するサンプルは以下の通りです。
実行例:
select Geo --output_columns distance --scorer 'distance = geo_distance("175904000x8464000", "145508000x-13291000", "rectangle")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "distance",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 1051322
# ]
# ]
# ]
# ]
このサンプルは子午線をまたいだ場合の距離を示します。 geo_distance("175904000x8464000", "145508000x-13291000", "rectangle")
はパリ(フランス)からマドリード(スペイン)間の距離を返します。
実行例:
select Geo --output_columns distance --scorer 'distance = geo_distance("146566000x-266422000", "-56880000x-172310000", "rectangle")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "distance",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 6880439
# ]
# ]
# ]
# ]
このサンプルは赤道をまたいだ場合の距離を示します。 geo_distance("146566000x-266422000", "-56880000x-172310000", "rectangle")
はニューヨーク(アメリカ)からブラジリア(ブラジル)間の距離を返します。
実行例:
select Geo --output_columns distance --scorer 'distance = geo_distance("143660000x419009000", "135960000x-440760000", "rectangle")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "distance",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 10475660
# ]
# ]
# ]
# ]
このサンプルは日付変更線をまたいだ場合の距離を示します。 geo_distance("143660000x419009000", "135960000x-440760000", "rectangle")
は北京(中国)からサンフランシスコ(アメリカ)間の距離を返します。
注釈
geo_distance
は方形近似をデフォルトとして使用します。 approximate_type
を省略すると geo_distance
は rectangle
が指定されたものとして振舞います。
注釈
geo_distance
は approximate_type
の値が "rectangle"
であるときに point1
の値として座標を表す文字列を受けつけます。もし sphere
や ellipsoid
と一緒に座標を表す文字列を point1
へ指定した場合、 geo_distance
は距離の値として0を返します。
7.15.6.4.2.1.2. sphere
#
この引数を指定すると球面近似で地形を近似して距離を計算します。
球面近似は rectangle
よりも遅いです。しかし rectangle
よりも誤差は小さくなります。
sphr
を省略表記として指定することができます。
カラムの値で距離を計算するサンプルは以下の通りです。
実行例:
select Cities --output_columns _score --filter 1 --scorer '_score = geo_distance(location, "185428000x-461000", "sphere")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "_score",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 5558225
# ]
# ]
# ]
# ]
7.15.6.4.2.1.3. ellipsoid
#
この引数を指定すると楕円近似で地形を近似して距離を計算します。
ヒュベニの距離計算式により距離を計算します。 sphere
よりも遅いですが、 sphere
より誤差は小さくなります。
ellip
を省略表記として指定することができます。
カラムの値で距離を計算するサンプルは以下の通りです。
実行例:
select Cities --output_columns _score --filter 1 --scorer '_score = geo_distance(location, "185428000x-461000", "ellipsoid")'
# [
# [
# 0,
# 1337566253.89858,
# 0.000355720520019531
# ],
# [
# [
# [
# 1
# ],
# [
# [
# "_score",
# "Int32"
# ]
# ],
# [
# 5836138
# ]
# ]
# ]
# ]
7.15.6.5. 戻り値#
geo_distance
はFloat型の値を距離として返します。単位はメートルです。
脚注